自分の親が認知症だと診断されれば、誰もが親と自分の将来を悲観してしまうでしょう。
確かに以前は「痴呆症」と呼ばれていた認知症は、認知症の患者を支える家族にまで大きな負担がかかってしまう病気です。
しかし、認知症から目を背けず理解をして、適切な介護の仕方を知ることで家族の負担も軽減できます。
まずは、認知症がどのような症状なのか、簡単にでもよいので理解していきましょう。
目次
認知症で起こる具体的な症状は?
身近な人が病気を発症したとき、その病気によって具体的にどのような症状があらわれるのか気になりますよね。
認知症とは、簡単にいえば「なにかしらの原因によって認知機能が低下し、日常生活に支障があらわれてしまう状態」のことです。
細かく分類すると認知症の原因となる病気は、「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」「血管性認知症」の4種類がメインであり、一般的には次のような症状があらわれます。
中核症状
中核症状とは、認知症によって脳の神経細胞がダメージを受けてしまうことであらわれる症状であり、認知症であれば下記のいずれかの症状が必ずあらわれます。
記憶障害
人が何かを記憶するためには、ものごとを覚えておく「記銘」、記銘している状態を保つ「保持」、保持しているものを引き出す「再生」という3つの力が必要ですが、いずれかの機能がうまく働くなると記憶障害があらわれます。
認知症の場合は、昔の記憶はしっかりと覚えていても新しいものごとを覚えにくくなったり、記憶そのものが抜け落ちるといった症状があらわれます。
記憶障害は認知症の代表的な症状であり、認知症と聞くと多くの方がこの記憶障害を想像しますね。
見当識障害
人は時間、場所、人間といった周囲の状況を総合的に判断することで、今の状況を正しく理解します。
見当識障害では「時間」「場所」「人」について正しく認識できなくなり、外出後自分の家に戻れない、夏に暖房をつけるといった認知症特有の行動をとるようになります。
記憶障害に次いで、認知症であらわれやすい症状です。
実行機能障害
実行機能障害では、物事の手順や方法がわからなくなり、順序よく段取りを進めたり、計画的に行うことが難しくなります。
その結果、日常生活を送る中で当たり前のように繰り返し行っていた料理、掃除、買い物といった行動に支障があらわれるのです。
失認、失行、失語
目はしっかりと見えている、耳はしっかりと聞こえているのに理解ができなくなる「失認」、手足や体は問題なく動かせるのに歯磨きなどの当たり前の行動ができなくなる「失行」、言われている言葉が理解できなかったり、言葉がでなくなる「失語」という症状があらわれることもあります。
理解力、判断力の低下
物事を理解する力、適切な判断をする力が低下することで、今の状況に合った行動をとるのが難しくなります。
周辺症状
周辺症状とは、中核症状が原因となって二次的に引き起こされる症状のことです。
中核症状と違い、周辺症状は本人の性格や周囲との人間関係などが大きく関わるため、個人差があるのが特徴です。
具体的な周辺症状としては、次のようなものがあげられます。
多動、徘徊
その場にじっとしていられず動き回る。
でかけた後記憶障害や見当識障害の影響で自分の家がわからずに徘徊する。
暴言、暴力
奇声をあげる。
認知症発症前より怒りやすくなる。
無為、無反応
日常生活で何もせずに時間を過ごす。
家族や介護者の問いかけに反応しない。
不潔行為
トイレ以外で排泄してしまう。
排泄物に触れたり、トイレになすりつける。
食行動異常
記憶障害で食べたことを忘れて何度も食べてしまう。
失認により食べ物ではないものを口にしてしまう。
極端に甘いものばかりを食べてしまう。
レム睡眠時行動障害
睡眠時に見ている夢の内容に反応して、歩き回る、暴言を吐くなどの行動をとってしまう。
介護拒否
記憶障害でいつも介護してくれている人を忘れてしまう、介護者の説明を理解できずになにをされるかわからない、といったことが原因で、介護を拒否してしまう。
抑うつ症状
本人が自分が認知症であることを自覚し、なにをしても上手くいかないと感じ抑うつ症状になる。
不安、焦燥
認知症を自覚することで、できない自分に不安になったり苛立ってしまう。
自発性の低下(アパシー)
気力がなくなり、自分から行動する意欲を失うこと。
うつ病と似ているが、うつ病は気分の浮き沈みがあるのに対して、アパシーでは関心を抱くことがなく、感情がフラットで無関心なのが特徴。
妄想
記憶障害が原因で、誰かに大事なものを盗まれた、隠された、家族から見捨てられた、食事に毒を盛られた、配偶者が浮気している、などの妄想があらわれる。
幻覚
実際には見えていないものが見えたり、実際にはいない人の声が聞こえる。
認知症は治る病気?
さまざまな症状があらわれる認知症ですが、家族としては認知症が治るのかというのも気になる点ですよね。
認知症にもたくさんの種類があり、多くの認知症は薬物療法や行動療法で症状の進行を緩やかにすることはできても、完治をさせることは難しいです。
しかし、次のようなタイプの認知症や認知症に似た症状があらわれる病気は、薬や手術による治療で完治できるケースもあります。
・突発性正常圧水頭症
・慢性硬膜下血腫
・甲状腺機能低下症
まとめ
自分の親が認知症を発症し、初めて介護をするという方も少なくないでしょう。
認知症の中には治療で完治するものもありますが、多くの場合は症状の進行を食い止めたり遅らせることで精一杯です。
今回紹介したように、認知症を発症すると記憶障害や見当識障害をはじめとするさまざまな症状があらわれ、本人はもちろん認知症の親を支える家族も今までのような生活を送るのは難しくなります。
これから認知症の親を介護する生活が始まるのであればケアマネジャーに相談し、デイサービス、訪問介護、介護保険施設などさまざまな面でサポートをしてくれる介護保険サービスを上手に利用して、負担を軽減していきましょう。
